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仮想世界の多重人格 Multiple personality of virtual world

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  • Second Life小説、第1巻
    [ 2011-05-16 19:33 ]
  • Second Life小説■海沿いの店で…
    [ 2011-04-05 19:44 ]
  • Second Life小説■夕焼けが空を染めている…
    [ 2011-03-26 01:11 ]
  • Second Life小説■降る雪を眺めながら…
    [ 2011-01-16 11:23 ]
  • アロマキャンドル・ストーリー
    [ 2010-11-02 11:02 ]
  • Multiple personality of virtual world/仮想世界の多重人格・その1
    [ 2009-11-04 02:53 ]
  • 創作■Second Life virtual travel/6
    [ 2009-07-19 23:54 ]
  • 創作■Second Life virtual travel/5
    [ 2009-07-13 17:29 ]
  • 創作■Second Life virtual travel/4
    [ 2009-07-10 16:52 ]
  • 創作■Second Life virtual travel/3
    [ 2009-07-09 17:39 ]

semスキン用のアイコン01Second Life小説、第1巻semスキン用のアイコン02

  

2011年 05月 16日



仮想空間Second Lifeを舞台にした物語。小説形式のSecond Life紹介であり、Second Life考察でもあります。またカテゴリは「純文学」としましたが、そんなに堅苦しいものではありません。
Second Lifeを知らない人には興味を持ってもらえるもの、Second Lifeをご存じの方にはなるほどと思っていただけるものになっていれば執筆の目標は達成されます。
なお、本作は以前ブログに発表したものに、その後リリースされたSecond Life Viewer2の機能など、操作等の表現を中心に加筆訂正したものです。挿絵のスナップショットは今回用に撮り下ろしました。

 ブクログのパブー

by SUZUKAZE-YA | 2011-05-16 19:33 | NOVEL

semスキン用のアイコン01Second Life小説■海沿いの店で…semスキン用のアイコン02

  

2011年 04月 05日

 足元に波が寄せている。
 海岸というわけではない。わたしの店、カフェバーの床だ。
 このような作りは現実世界ではできないことだけど、仮想空間なら波の風景、波の音を脚が濡れることを気にせずに楽しむことができる。
 もっともSecond Lifeという世界が水の描写がキレイだからこのような作りにしたというのも理由のひとつと言っていいだろう。



 一応床はある。
 水面ギリギリ、水面のきらめきが表示される高さに設定してある。床には天の川のような星のテクスチャーが使われているのだけれど、水面のきらめきとゆがみで珊瑚礁にも見えるから不思議だ。
 四方の壁はガラス張り。店は海沿いにあるのでカウンターに座ると水平線が見え、西に位置しているので日の沈む時間には夕焼けがキレイに見える。
 Second Lifeでもカフェやバーは現実世界のような作りが多い。
 オシャレでいい雰囲気の店も確かに多いのだが、自分がそこで店番をすることを考えるとずっと同じ店内を見ているのは飽きてしまう。そこで四方をガラス張りにして風景が観られるようにした。
 動きのある波と水面のきらめき、四方の風景、それだけで何時間も店番をしていられる。
 もっとも土地の音楽を聴いていたり、誰もいなければネットをみたりブログを書いたりしているのも事実だけれど。
 Second Lifeを始める以前、いくつかのテキストベースのチャットルームにも参加していた。常連の集まる部屋もあったけれど、ある程度決まった時間にならないと人は来ず、それ以外の時間にログインして待っていても真っ白な画面を見ているだけでは30分とはもたなかった。
 その点Second Lifeでは眺めていられる画像があるということだけでもゆっくり人の来るのを待っていられる。わたしの場合この画面を半ば「壁紙」として活用していたりもするのだけれど。
 たとえばMMORPGでもチャットはできる。キャラクターが発言するとフキダシが表示されたりもする。けれどSecond Lifeのそれとはやはり一線を画するという印象がある。
 なにが違うのかというと、Second Lifeではチャットを入力するとアバターがタイプを打つような動作をするので、いまなにかを言おうとしているのがわかる。それだけでもいまその人と会話をしているという臨場感が出るのだと思う。
 文字のチャットに連動してアバターに動きをつけたり音を出したりするジェスチャーという機能もテキストベースのチャットルームや一般のMMORPGでは味わえない楽しさだろう。そしてそんなジェスチャーをユーザーは自由に作ることもできる。
 強いてマイナス面をいえばテキストベースのチャットルームでは、部屋のタイトルで話題のテーマを掲げることで共通の話題で盛り上がれるメンバーを集めることができるけれど、Second Lifeのカフェやバーではそれがしづらいことかもしれない。けれど店の看板などでその店の特徴を謡うことは可能だ。
 またキーボードで文字を打つのが面倒というユーザーはマイクを使ってボイスチャットするという方法だって用意されている。
 Second Lifeの楽しみ方は人それぞれだろうが、やはりチャットをはじめとするコミュニケーションが最大の魅力なのではないだろうか。
 
 さて今日はどんな会話ができるだろうか。
 波の音を聞きながら誰かの来るのを待ってみよう。
 

by SUZUKAZE-YA | 2011-04-05 19:44 | NOVEL

semスキン用のアイコン01Second Life小説■夕焼けが空を染めている…semスキン用のアイコン02

  

2011年 03月 26日

 水平線に日が沈んでいく。
 Second Lifeの風景の中でも夕景はことに美しい。
 Second Lifeのビュワーには太陽の位置を設定できる機能があるので、日の出や正午、夕日とその場所や自分の好みの太陽の位置にすることでそれぞれの時間帯の光や風景が楽しめるのだけれど、デフォルトで沈んでいく夕日は固定された夕日よりも美しい。



 雲が流れ、日が沈むSecond Lifeの世界には、目には見えないもうひとつの要素がある。
 それは風だ。
 サウンド設定にも風の音量が用意されている。あまり大きくすると荒野のような寂しい気分になってしまう音だけれど。
 またこの風によってフレキシブル設定したオブジェクトが揺れたり流れたりもする。
 風に揺れるカーテンや風に乗って飛ぶたんぽぽの綿毛など、自然を楽しむこともSecond Lifeの中でできるというわけだ。
 ユーザーによって作られた自然のサウンドも商品としてあるので、たとえば夏にはセミの声や川のせせらぎといった音を楽しむことだってできる。風鈴の音などもすでにSecond Lifeの中では風物詩のようにその季節になるといろいろな場所で聞ける。
 森に行けば鳥や虫の声がしたり、川の流れる音、波の寄せる音、その他さまざまな音が仮想空間を演出している。
 もちろん自然の音だけではなく、車のエンジンやドアの開閉の音、歩けば靴に仕込まれた足音がするものもある。
 SIM全体で環境を整え、景観を統一している場所もあれば、区画を区切ってそれぞれ違う演出にまかせているところもある。それらをひとつひとつ楽しんでみたいが、Second Lifeの広大な世界をすべて回るのはもはや不可能といってしまっていいだろう。
 ひとりでフラリとSIM観光を楽しむのも悪くないが、やはりオンラインの特性を活かして仲のいい友人や恋人と巡ってみるのがいいのかもしれない。同じ風景を共有できるのはオンラインだからこその楽しみだ。
 気に入った場所があったらランドマークを取得しておけばまたいつでも行くことができる。距離を気にせずテレポートできるのもSecond Lifeのいいところだ。もっとも独立したSIMには歩いたり飛んだりして行くことができないシステム上の理由もあるのでテレポートするしかないのではあるけれど。
 SLURLと呼ばれる「座標」がわかっていればグーグルでも検索して地図を表示することができるし、Second Lifeにログインしていればそのままテレポートすることもできる。またユーザーがほかのユーザーにテレポートを送って呼ぶこともできる。
 わたしは自分の店のテレポート着地点を設定しているので、土地の中のどこを指定してテレポートしてきても入り口の近くに降り立つようになっている。
 本当は店の前に設定した方がいいのだろうけど、こちらが店の奥に立っていることが多いこともあって、入り口の中に設定している。Second Lifeのオープンのチャットは通常20メートルまでしか届かないので、テレポートしてきた人にすぐ話しかけられる距離というわけだ。
 このテレポートでも、消える瞬間、現れる瞬間にアバターがアクションを起こしたり光を発したりするアイテムやアニメがユーザーによって作られている。ことに日本人ユーザーとってはアニメや漫画からの影響もあってテレポート時になにかのアクションがあった方が楽しいのかもしれない。
「いらっしゃいませ」
 今日、最初の来客だ。
「カウンター席は夕日の設定がおススメですよ」
 夕日に染まる空を眺めながら今日もチャットを楽しもう。
 同じ時間と空間を共有できることがこの仮想空間の魅力なのだから。

by SUZUKAZE-YA | 2011-03-26 01:11 | NOVEL

semスキン用のアイコン01Second Life小説■降る雪を眺めながら…semスキン用のアイコン02

  

2011年 01月 16日

 雪が降っている。
 雪の結晶のテクスチャーをパーティクルに貼り付けてスクリプトで降らせているSecond Life内の雪だ。



 ゆっくりと落ちてくる雪、ちょっと早く落ちてくる雪。結晶もいくつか種類があってなかなかリアルな雪に見える。
 仮想空間には季節はないけれど、このように季節を「演出」することはできる。それも楽しみ方のひとつといっていいだろう。
 Second Lifeの日本語版がリリースされ、日本でも仮想空間という言葉が一般の週刊誌やテレビでも聞かれるようになったころ、Second Lifeはそのシステムから現実のビジネスにも直結するものだと宣伝されていた。
 もちろんその要素を否定するわけではないけれど、Second Lifeを使って、その中から
得られる収入で生活できるほど稼ぐのはそうとうなアイデアと初期投資が必要であり、それを維持していくことにもかなりの努力が必要だ。
 とはいえ、一般のユーザーにとってうれしいことは、一切課金をしなくてもSecond Lifeを楽しむことができるということ。
 もちろん無料のアイテム(服やその他さまざまなもの)が豊富だということもあるけれど、ちょっとした買い物をするために必要なSecond Life内の通貨リンデンドルを稼ぐ手段もたくさんあるということ。ビジネスとして現実世界に影響するほどの収入にはならなくとも、Second Lifeを楽しむくらいの収入はSecond Life内で稼ぐことができるというのも現実といえる。
 たとえばこの雪も、降雪機として販売できる。
 仮想世界は現実を模倣しはするけれど、仮想世界ならではのものも多いし、模倣できない現実も多い。
 ヴァーチャルとリアルが重なっているようでズレている、そんな印象か。
 Second Lifeのいいところは各ユーザーが自作したりした写真や画像をテクスチャーとして持ち込んだり、音楽ファイルをアップロードできるところではないだろうか。
 そのことでオリジナルのアイテムを作ることができ、リンデンドル収入にもつながる。
 もちろんただ楽しむためにフリーのアイテムとして配布することも自由だ。
 ここで誤解されると困るのはいわゆるもの作りができないとリンデンドルが得られないのかということ。
 Second Lifeをはじめ多くの仮想空間は、はじめにコミュニケーションありきの世界。つまりチャットなどで他のユーザーとコミュニケーションすることで面白さを実感するし、この世界を楽しめるはずだ。
 したがってチャットをはじめコミュニケーションを目的とした収入方法もある。たとえばカフェやバーの店員としてやってくる人たちとチャットする仕事だ。
 店から給料を支払う場合もあるし、客がチップを支払う場合もある。
 店員や客、大勢でわいわいチャットするところもあるし、1対1でゆっくり話せるクラブなどもある。
 明確にSecond Lifeでなにをしたいと目的を持っている場合の方が実際には少ないだろうし、Second Lifeにログインして、誰か(いつも顔を合わせる仲間や行きつけの店、初めて訪れた場所で出会った人、などなど)と話しをすることに楽しさを感じている人は多いと思う。
 仮想空間以外のチャットルームのように自分の部屋を作りたければ、土地を借りて自分の店を造るという楽しみ方もある。
 好きなように建物を造り(買ってきてもいい)、土地に流す音楽を設定し(ネットラジオなどのURLを設定するとみんなで同じ音楽を楽しめる)、チャットを楽しむことができるというわけだ。仮想空間だからこそのコミュニケーションの形態といってもいいだろう。中にはチャットするだけなら文字だけで充分といんう人もいるが、仮想空間でのチャットを体験すればその楽しさが文字だけのものとはまったく違うことが理解できるだろう。

 さて、今日も店を開けることにしよう。
 雪の中、ジャズを聴きながら。
 

by SUZUKAZE-YA | 2011-01-16 11:23 | NOVEL

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2010年 11月 02日

 ***episode 1
 
 わたしの週末の楽しみ…それはゆっくりお風呂に入ること。浴室にアロマキャンドルを置いて、ローソクの光でちょっと幻想的な入浴タイムを楽しむのです。
 その日の気分で香りを選んで、ローソクの炎を眺めながらゆったりとした気分に浸ると一週間の疲れがとれるような気がします。だから、普段は忙しくてシャワーで済ませてしまうことがあっても、週末だけは時間をかけてゆっくりとお風呂に入ることにしているんです。
 そういえば、そろそろキャンドルがなくなりそうだった。今日は帰宅する前に買っておかなくちゃ。
 朝、通勤電車の中でそんなことを考えていたけれど、仕事が遅くなっていつもキャンドルを買うお店の閉店時間を過ぎてしまい、しかたなくほかにキャンドルを売っているお店がないかと、途中下車してショッピングモールに寄ることにしたんです。
 たしか以前そのモールに行ったときに、小さいお店でしたがお香やアロマキャンドルを置いているお店があったんです。おぼろげな記憶を頼りにモールを中をお店を探していると…無事に見つけることができました。けれど両隣のお店は以前来たときとは別のお店に変わっていて、よくここだけ残っていたものだという気がしました。
 お店の中はインドやネパールなどの雑貨、パワーストーン、お香にアロマキャンドル、アロマオイルなどが並んでいます。雑貨好きな女性には受けるのかもしれません。
 とはいえここももう閉店時間が近いのか、ほかにお客の姿はなく、周囲のお店も閉店の準備を始めているような感じでした。
 わたしがちょっと焦った気持ちでアロマキャンドルの前で、どれを買おうか迷っていると、レジの向こうから店員の女性が「キャンドルですか?」と声をかけてきました。
「え、ええ。アロマキャンドルを…」
「よかったら、こちらに新しいのがありますよ。さっき届いたばかりで、まだお店に出してないんです」
 こちらへ、とにっこり微笑む店員さんに誘われて、わたしはレジの前に行ってみました。店員さんは段ボール箱の中から数本のキャンドルを取り出してレジの置いてある台の上に並べました。どれも色が鮮やかで、ほんのりといい香りがしています。
「これ、お店に出ているのとは違うんですか?」
「はい、まったく新しいところから仕入れたんですよ。きっとこちらの方が香りもいいと思います」
 わたしはそのキャンドルを香り別に3種類、2本ずつ買ってお店を出ました。火を灯すのがとても楽しみで帰宅の足も早くなっていました。
 帰宅すると、まずは夕飯の支度をして撮りためてあったドラマを見ながら食事。インターネットでメールのチェックなどを済ませてからお風呂の準備をしました。
 バスタブにお湯をためながら、買ってきたキャンドルを出してどれに火をつけるか考えました。買ってきたのはジャスミン、ローズ、イランイランの3種類。それぞれにリラックス効果があるとされている香りです。ちょっと迷ったすえに、わたしはローズのキャンドルを一本選び、残りを袋にしまい、バスルームに戻りました。
 バスタブのお湯は適度な量になっていました。わたしはキャンドルホルダーをダスタブの横においてキャンドルに火を灯すと、寝室に戻って服を脱ぎ、バスルームに戻りました。その短い時間でバスルームは薔薇のいい香りに包まれていました。バスルームの照明を消し、キャンドルの明かりだけにしてお湯に浸かります。いい香りを吸い込みながらリラックスした気分に浸ることができました。
 と、そのときでした。ふと何かの気配を感じてキャンドルの方に目を向けてみると、炎のちょっと上の方に10センチくらいのぼうっとした影が浮かんでいるのです。
 影はふわふわ漂うに炎の上にありました。じっと見ているとだんだん輪郭がかっきりしてきて、妖精のような女のこの姿が見えてきたんです。
 わたしは思わず、フッとキャンドルを消してしまいました。
 するとその影も炎といっしょにフッと見えなくなってしまいました。

************************************

 以後、episode.10までを「ブクログのパブー」にて電子書籍で販売中!

by SUZUKAZE-YA | 2010-11-02 11:02 | NOVEL

semスキン用のアイコン01Multiple personality of virtual world/仮想世界の多重人格・その1semスキン用のアイコン02

  

2009年 11月 04日

***イントロダクション
 
 3D仮想世界「Second Life」。
 それは最初、単なるオンラインゲームのひとつだと思っていた。
 しかし、1度その世界に入ってみると「ゲーム」と呼ぶには違和感のある世界だった。武器を持ってモンスターと闘うわけでもなく、なによりもシナリオや消化するクエストがない。
 けれども、この世界に何かを感じ、楽しさを見つけた人々はこの世界の住人として生きていくことになるのだ。
 そしてそれは、もうひとりの自分なのか、もうひとつの人格なのか…?



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by SUZUKAZE-YA | 2009-11-04 02:53 | NOVEL

semスキン用のアイコン01創作■Second Life virtual travel/6semスキン用のアイコン02

  

2009年 07月 19日

Second Life virtual travel/仮想空間妄想旅行記6

「こんにちは、いらっしゃいませ」
 あやさんに教えてもらったお店のLMにテレポートしてみると、すでにそこはお店の中で、カウンターの中にいる女性が声をかけてきた。
「こんにちは」
 周囲がまだ表示されずぼんやりしていたが、とにかく返事をしなければ、とボクは挨拶を返していた。けれどその女性の姿がハッキリ見えてくると同時に名前をよくみてみると…。
「あれ、あやさんじゃないですか」
「はいw」
 ボクはカウンターに近づいてアバターを確認した。
「ここって、あやさんのお店?」
「実はそうです。もうひとつの方はもう行かれました?」
「いえ、こちらから来てみました。なんだ、びっくりしたなあ」
「そっか、こっちはあとからいらしてくれれば、と思ってたんですけど」

「ここはひとりでやってるんですか?」
 カウンターの席に座ってボクは聞いてみた。
「いえ、夜はほかにもスタッフが手伝ってくれてますよ」
「そうなんだ」
 四方の壁はガラスタイルで外の風景が見え、片側はすぐに海になっている。
 カウンターはしごくシンプルだが、あやさんの後ろのバックバーはお酒のビンが並んでなかなか豪華な感じだ。
 床は…波が寄せていた。
「あれ、ここって海なんですか?」
「あはは。床が水面よりちょっと低いんです」
「そんなこともできるの?」
「うん。土地を編集することで深海にも高い山にもできますよ」
「へえ」
 もちろん土地を編集するには、自分でSIMを持ったり、土地を借りたりしなければならないだろうが、いま話を聞くまでは、たんに平らな地面に建物を置いていくというイメージしか、自分は持っていなかった。
「SLの中に山があったりビーチがあったりしますけど、ああいう土地もユーザーが作っているわけですか」
「そうですね。昨日のビーチもそうです」
「なるほど~」
「もしかして、この波も?」
 ボクは足元に寄せている波が、SIMの外の海にはないことに気がついた。
「うん、こういう波もユーザーが作ったものですよ。波専門のショップもあります」
「へえ」

 改めてSLの世界はユーザーが自由に作り上げているのだと感じた。土地を持って自分の好きなように造成して、建物を造ったら…SLユーザーがただこの世界でチャットをするだけでなく、もの作りや店の経営をするのが少しわかったような気がした。
「ここはぜんぶあやさんが作ったんですか?」
「作ったものもあるし、フリーで集めたものを改造したものもありますね」
「改造というと?」
「編集可能なアイテムのテクスチャーを貼り替えたり、必要な部分だけ残して別のパーツと組み合わせたり、ですね」
「そういうこともできるんですね」
「ですです。この建物もフリーのもので、周りの壁はもともと木目だったんですけど、ガラスタイルのテクスチャーを貼ったんですよ」
「なるほど」返事をしながら改めて周りを見回してみる。そしてひとつのことに気がつき、彼女に聞いてみた。「ここ、入り口というかドアとかないんですね」
「あ、うんうん。壁のひとつがファントムになっているのでドアは作らなかったんです」
「ファントム?」
「うん。プリムを通り抜けられるようにできるんです」
「へえ、そういうこともできるんですね」
 SLの中でお店を経営しているユーザーは多い。自分でつくった服やグッズを販売するためにショップを持つのは自然な流れだろう。
「あやさんはなぜバーを作ったんですか?」
「というと?」
「あ、いや、SLでお店を作るのはバーでなくてもよかったわけでしょ?」
「そうですね。わたしは服やスキンは作れないし、売り物になるようなグッズも作れないから」
「なるほど」
「それ以上に、SLをチャットを楽しむ場所だと思っているので、カフェとかバーのような、人が集まってチャットをする場所を作りたかったんです」
「ああ、そういうことなんですね」
「そうだ。このお店のグループに招待しますね」
「はい」
 彼女がそう言ったあと少し待っていると右上に青い窓が開いた。グループへの参加を確認するメッセージが表示されている。ボクはOKして窓を閉じる。するとグループを名前といっしょに表示するかどうかを確認する青い窓が出たのでこれもOKした。ボクの頭の上に表示されている自分の名前の上に「SUZUKAZE-YA VIP」と表示された。
「お、VIPなんだ」
「あはは。グループに入るといきなりVIPになります」
「そうなんだ」
 VIP扱いはうれしいな、とちょっと思っていたので正直…まあ、でもこんなもんだろう。
「お客さまにランクつけるのもなんか気が引けるので、一律VIPにしたんですよ」
「なるほど~」ボクはふと気になったことを言ってみた。「このグループというのは、誰でも作れるんですよね?」
「うんうん、作れます。ただし100L$かかりますけど」
「そうなんだ。けっこうかかりますね」

「ところで」彼女が言った。「わたしもひとつ、うかがいたいことがあるんですけど」
「はい、なんでしょう」
「SLをしばらく離れていたって言ってましたよね。戻ってきた理由ってなんです?」
「ああ」
 特に理由があって戻ってきたわけではなかったので、一瞬ボクは言葉に詰まってしまった。
「べつにこれといった理由はないんですけど…ネットのニュースで最近のSLの話題を見たことかもしれませんね。『そういうえば、いまSLはどうなってるんだろう』っていう気持ちだったかな」
「なるほど~」
「ユーザー数は増えてるみたいですけど、このまえあやさんに聞いたみたいにそのぶん世界も広くなってみんな分散しちゃってるみたいだし」
「うん」
「でも、ボク自身は戻ってきたというより、初心者からやり直した感じですね」
「以前SLを離れた理由って聞いてもいいですか?」
 彼女はしばし間を置いてから言った。
「差し支えなければでいいですけど」
「うん、別にトラブルがあったとかいうわけではないからかまわないですけど」
 とそこまでチャットを打ち込んでから、自分でもSLを離れた理由をひと言でどういえばいいのか考えてしまった。
「SLの楽しみ方がよくわからなかったということですね、やっぱり」
「ふむふむ」
「そんなにインもしなかったし、ひとりでぶらぶらしててもあんまり面白くないなあという印象はありました」
「今回はどうです? 続きそうですか?」
「う~ん…確かにあやさんのおかげで以前よりSLのことがわかった気がしますし、チャットとかコミュニケーションがSLの要素として大きいという気もしてます」
「ですね。もの作りに没頭するか、コミュニケーションを楽しむかっていうのがSLの要素として分けられるかもしれませんね」
「うん。もの作りはまだやったことがないから、今度はそっちも始めてみようかな」
「うんうん。けっこうハマるかもしれませんよ」
「うん、自分でいろいろなものが作れたら楽しそうですよね」
「アクセサリーのような小さいものからお城のような大きなものまで、その気になれば自分で作れますからね。ハマったら奥が深いですよw」
「ですね~」
「もの作りが楽しくなると、時間の経つのも忘れちゃいますからログイン時間も長くなりがちですよね」
「あ、なるほど」
「だいたいSLユーザーの人ってみんな睡眠時間短くなってるみたいですw まあオンラインゲームやってる人は共通してそうなのかもしれないけど」
「ああ、そうかもしれませんね。ボクも気をつけないとなあ」
「リアルあってSLですからね。ほどほどにw」
「うんうん」
 いまは休日の昼間だから時間は気にならなかったけれど、休みの日にどこにもでかけずにSLをしているというのもなんだかな、という気にはなってしまった。
「それじゃボク、ちょっとリアルで出かけてきます」
「はい。いってらっしゃい」
「またいろいろ教えてください」
「はい、またです~」
 SLをログアウトしてPCのデスクトップ画面が表示されると、ちょっと寂しい気もした。日用品の買い物があるとはいえ、無理に出かけることにしたのもネットに依存しているのではないかという不安がさせたのかもしれない。
 適度な距離感を持って続けていけるやり方を考える必要もありそうな気がした。とはいえSLはすべてを自分でコントロールすることができる世界だ。レベルアップもクエスト消化も必要ない。きっとボクなりのSLの楽しみ方を見つけることができるだろう。
 そう、週末だけあやさんのお店でチャットするだけでもいいのだから。
 そんなことを考えながらボクはPCの電源を落とした。
 
 

by SUZUKAZE-YA | 2009-07-19 23:54 | NOVEL

semスキン用のアイコン01創作■Second Life virtual travel/5semスキン用のアイコン02

  

2009年 07月 13日

Second Life virtual travel/仮想空間妄想旅行記5

 Second Lifeを離れていた間に、インワールドもずいぶん変わっていた。それ以上に自分自身がいろいろなことを忘れていてすっかり初心者に戻っていることを痛感した。けれどあやさんのおかげでだいたいのことはわかってきた。これからはひとりでも行動していけるだろう。
 そんな気持ちで今日は、ひとりで日本のSIMと思われる場所をいくつか回ってみた。
「幕末」「江戸」「新宿」といったSIMだ。服などのショップではちらほら人も見かけたが、チャットをするという感じではない。バーやカフェ、居酒屋(?)といった感じの店もあるのだが、そこには人がいない。週末とはいえ昼間では店員もログインしていないのかもしれない。
 こうなってくるとひとりで行動できるようになったとはいえ、ひとりではつまらない気がしてくる。
 改めてSecond Lifeの世界がコミュニケーションツールだという印象を強く感じた。ひとりで動き回り、いろいろな場所にでかけて行っても、誰かとコミュニケーションしなければ、SLの楽しさは半減してしまうと思えたからだ。
 また夜にログインするか、と考えていたときに画面の右下にあやさんがログインしたというメッセージがでた。自分のフレンドのログイン、ログアウトを知らせるメッセージだ。
 やっぱり今日も彼女に頼ってみよう。どこか気軽にチャットの出来るカフェがあったら教えてもらおう。そんな気持ちでIMしてみた。
 
「いまさらなんですが…」
 今回彼女がテレポートで呼んでくれた場所は波の音がするビーチだった。周囲の椰子の木が南国ムードを漂わせている。そこで、いままでちょっと気になっていたのだがあえて聞かないでいたことを口にしてみた。
「あい、なんでしょう」
「あやさんの、チャットするときにでるその電気みたいなのはなんですか?」
 SLではチャットのタイプをすると、アバターがあたかもキーボートを打ち込んでいるような動きをする。彼女の場合、それに加えて球形の、イナヅマというかプラズマというか、電気のようなものが手元に表示されるのだ。
「ああ、これ。チャットアイテムです」
「そういうのがあるんですか」
「うんうん。いろいろありますよ。わたしもほかにノートPCが出るのを持ってますし。クラシックなタイプライターが出るのとか、楽器のキーボードみたいなものとか」
「へえ。高いんですか? そういうの」
「フリーのものもありますけど、これは30L$くらいだったかな」
「へえ」

 ボクはもうひとつ気になっていたことを聞いてみた。
「このあいだのライブのとき、チャットが20メートル離れると聞こえないって言ってましたよね。で、その範囲に人がいないから大丈夫って」
「あ、うんうん」
「それってどうやって調べるんです?」
「これはレーダーがあるんです。対人レーダー」
「へえ」
「自分の周りにいるアバターの距離と名前が表示されるのが基本かな。レーダーによってどの方向にいるとか、自分の位置より上とか下とか、高さが表示されるのもありますよ」
「それはどれくらいの範囲がわかるんです?」
「レーダーにもよりますけど、だいたい100メートルくらいはカバーしてるんじゃないかな」
「ふむふむ」
「あと、持ってると便利なものだったら…翻訳機とかかな。女性アバターだったらフェイスライトもあった方がいいだろうけど…最近は男性アバターもつけてるかな」
「翻訳機! フェイスライトって?」
「翻訳機は、通常チャットの発言を翻訳してくれるアイテムです。たとえばこちらが日本語で入力すると英文にしてくれて、相手の英文を和訳して表示してくれます」
「へえ、英語苦手だからたすかるなあ、そういうアイテムは」
「うんうん。でも機械翻訳だから教科書のような日本語で入力しないときちんと英訳してくれないんですよね。話し言葉としては不自然な感じになりますよ。逆にいつもの調子で日本語を入力するととんでもない訳になってたりします」
「なるほど。翻訳は英語だけ?」
「いえ、けっこう他言語に対応してるものもありますよ」
「へえ」
「フェイスライトは、たとえば夜の時間帯などで顔が陰になっているようなときに、光を当ててキレイにみせるアイテムです。これもいろいろあって、場所によっては光が強すぎて周りの人に嫌がられることもあります」
「そうなんだ。あればいいってものでもないんですね」
「これも進化していて、周囲の光を計算して自然に見えるようにしてくれるのとかあるみたいですね。高いけどw」
「そうなんだ」
「そういえば、あやさんときどき笑いますよね、アバターが。それも何かのアイテム?」
「そうです。表情をつけるアイテムがあります。あと立っているポーズとか歩くアニメとか、デフォルトではないものはAOを使っています」
「うんうん、それはSL休む前にも聞いたことあります。高いから買えなかったけど」
「そかそか。いまはフリーでもいいのがありますよ」
「そうなんだ」
「わたしはクレジットカードも登録していない、リアルマネーは使わない主義なのでほとんどフリーのものを使ってますよ。このスキンもフリーだし」
「そうなんですか? フリーにはみえませんね」
「前にもお話ししたと思いますけど、フリー商品以外にも、ショップの人集め用に商品をセレクトしてラッキーボードなどで配布しているのがあるから、けっこう質のいいものがフリーで手に入るんです」
「なるほど。そういう情報ってどうやって集めるんです?」
「そうですね~、SLユーザーに特化したSNSとかブログサービスがあるんですよ」
「ああ、そういえばありましたね。なんだっけ…SLマメ…」
「ソラマメというブログサービスですね。SLユーザーが日記を書いたり、お店の宣伝したりしてますよ。どこのお店でこんなラッキーボードがでてるとか、新商品がでたとか、ユーザーが情報交換していますね」
「ログインする前に見るといいわけですね」
「ですね。まあ、ログインしてからブラウザ出してチェックしている人も多いですけど」
「なるほど」
「記事にSLURLがでていることがほとんどですから、すぐにTPできるわけです」
「そうかあ。インしていた方がいいんだ」
「そそ」
「この場所もそんなふうにして見つけたんですか?」
「いあ、ここは友達が借りている土地なんですよ」
「へえ」
「土地の音楽もハワイアンで、その人の趣味」
 音楽を流してみると確かにハワイアンが流れていた。この場所に似合いすぎる感じだ。
「あ、ほんとだハワイアンだ」
「土地を持っていたり借りたりすると、こういうことができるからいいですよね」
「建物を建てるだけではなく、こんなビーチも自分で作れるんですねえ」
「うんうん」
 SLの自由度というのを改めて知ったような気がする。コミュニケーションにプラスして自由になにかを作ることができる世界というのは、ほかにはないだろう。
「あやさんもなにか作ったりすることあるんですか?」
「簡単なものなら作ることもありますよ。でも複雑なものは作れないから、積み木みたいなもんです」
「積み木かあ。確かにプリムを並べたり重ねたりって、積み木みたいなものかもしれませんね」
「うんうん」
 考えてみれば、いま周囲にみえているもののほとんどはユーザーによって作られたものだ。Second Lifeを運営するリンデン・ラボ社がプロのデザイナーを使って用意したものではない。もちろんユーザー自身がデザインの仕事をしている場合もあるだろうが、ほとんどはリアルでは普通のサラリーマンだったり、デザインやアートには無関係な人たちのはずだ。SLを始めて、SLでのもの作りによって、自分の才能に目覚めるというか、デザインすることや何かを作ることに楽しさを感じた人たちが多いと思う。それもまたSLの楽しみ方のひとつであり、可能性のひとつといえるだろう。
 そして、それらもまたコミュニケーションがあってこそ楽しめるということも、ボクは今日感じていたはずだ。
「ところであやさん」
「あい」
「どこか、気軽にチャットできるような場所ってあります?」
「とういうと、人が集まっている場所ってことです?」
「うんうん。さっき何か所か行ってみたんですけど、これといった場所がなかったので、どこかいい場所があれば教えてもらおうかと」
「うんうん。そうですねえ…カフェみたいなところのほうがいいですよね。ダンスとかジェスチャーで騒いでいるような場所より」
「そうですねえ。できればチャットで話しを楽しむような場所がいいなあ」
「ちょっとランドマーク探してみますね。まってね」
「はい、すみません」
 数分待っていると、右上に彼女からランドマークが送られてきたことを示す窓が開いた。受け取りのボタンをクリックすると、もうひとつ窓がでている。これも別の場所のランドマークらしい。
「とりあえず2か所です」
「ありがとう」
「夜だったら誰かいると思うので、行ってみてください」
「はい」
「お店の雰囲気とか、集まっている人の感じとかは行ってみないとわからないだろうから…気に入るといいんですけどね」
「そうですね。1度のぞいてみますよ」
「うんうん」
「それじゃ、ちょっとリアルででかける用事があるのでこれで落ちますね」
「あ、はあい。いってらっしゃい」
「またです~」

 彼女がログアウトすると、なんだか急に静かになったような気がする。テキストのチャットなのだから声が聞こえていたわけではないのに不思議な感じだ。
 改めて周りを見回してみると、白い砂浜になみがうちよせている。音楽を切ると波の音がよく聞こえ、本当の海岸にいるような気分になれる。
 自分でもこんな場所を作って、そこに人が集まったら…、ふとそんなことを考えてみた。きっとSLの中でカフェやバーを経営している人たちはそんなことを考えて始めたのだろう。
 なんとなく、SLでの目標が見つかったような気がした。いつかその目標が実現できるのか、またSLに魅力を感じてくなって離れていくのか…。いまのボクにはどちらとも言えないが、少なくとも以前SLを離れたときとは違う「手応え」のようなものを感じているのは確かな気がする。
 この思いが続いている限り、SLの可能性を感じている限り、またSLに戻ってくるだろう。そんなことを考えながら終了ボタンをクリックしていた。
 

by SUZUKAZE-YA | 2009-07-13 17:29 | NOVEL

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2009年 07月 10日

Second Life virtual travel/仮想空間妄想旅行記4

 ログインすると足湯の中だった。周囲にはやっぱり誰もいない。
 足湯の前には和風な石庭があり、金閣寺のような建物もある。さらにその周囲を囲むように桜の樹が並んでいた。
 ボクは座って足湯に浸かりながら、今日はなにをしようか考えてみた。いつもいつもあやさんを呼び出してあれこれ教えてもらうのも気が引けるので、たまにはひとりでどこかへ行ってみようかと思って、適当な単語で場所の検索をしてみた。
 するとそこにIMが入った。
「こんばんは」
 あやさんだった。
 
「ライブのイベントがあるんですけど、来てみませんか?」
 どんなジャンルのライブなのかも聞かないまま、テレポートで呼んでもらうと、そこは建物らしいものはいっさい建っていない、南の島のようなところだった。
「こんばんは。向こうの木のところにピアノがあるんですけど…見えますか?」
 だんだん景色がハッキリ見えてくると、たしかに離れたところに大きな木が立っていて、そのそばにピアノが見えた。
「はい。ピアノもありますね」
「そそ。そこで演奏があります」
「なるほど」
「土地の音楽を再生すれば、この場所でも聞けますから」
 ボクは音楽を再生してみた。ピアノの音が流れ始める。そして女性ボーカルの透明感のある声も。
「いい感じですね」
 気がつくと同じようにSIMのあちこちに人が集まってきていた。ピアノの周りにも何人かが立っている。
 チャットしている人はいないようで、みんな黙って音楽を聴いている。

[こんばんは、今日は来てくださってありがとうございます]
 曲が終わるとボーカルの女性の声が聞こえてきた。
 どうやら生のMCらしい。こんなこともできるのかと思った。
「あやさん、これはボイスチャットではないですよね」
「うん。ネットラジオで放送してると思います」
「なるほど。演奏も生?」
「曲は生でやる人もいるし、音のデータを放送してる人もいますね。彼女の曲はいろいろ音をミックスしてるから、生では難しいかも」
「なるほど~」
「ギターの弾き語りをやってる人なんかは生で演奏してますよ」
「へえ。そういうのも聴いてみたいですね。あ、あんまりチャットしてると迷惑ですかね?」
 また曲が始まったので、ボクはちょっと気になってしまった。
「ダンス系のイベントとかだとチャットも賑やかでいいですけど、こういうライブのときは控えた方がいいかもですね」
「そうですね。すみません」
「まあ、普通のチャットは20メートル離れると聞こえないので、この場所だったらほかの人には見えてませんよ」
「そうなんだ」
 確かにチャットの有効範囲というのはあったような気がする。それもあって彼女はピアノから離れたこの場所を選んだのかもしれない。
 ライブは1時間弱、7~8曲聞くことができた。癒し系で、CDが出ていれば買いたいなと思えるほど完成度も高かった。
「SLで音楽活動している人ってけっこういるんですか?」
 ボクはふと彼女に聞いてみた。
「けっこういますよ。ほとんどはアマチュアのミュージシャンだったり趣味で音楽をやっている人たちですけど、インディーズでCDを出している人もいるし、海外ではけっこう名の知れたミュージシャンがライブすることもあるみたいですよ」
「へえ」
「日本にもレコード会社の企業SIMがあって、イベントとかしてますけど…あゆがSLにインしたって話は聞きませんねw」
「そういう人がSLやってたら、もっとユーザー増えるでしょうね」
 そういえばテレビの深夜番組で、タレントや芸人がSLにログインしてその画面を使っていたものがあったような気がするが、それによってユーザーが増えたという話は聞かないし、あまり影響はないのかもしれない。
「よかったら、ダンスのイベントにも行ってみませんか?」
 彼女がふと言った。
「ダンスのイベントもやってるの?」
「ええ。週末でイベントが重なったみたいで」
「なるほど。行きましょう」

 彼女に呼んでもらった場所は照明のくらい店内のようだった。左下に「深夜設定でお楽しみください」と文字がでた。
「あやさん、深夜設定って?」
「うん、上のメニューの中に『世界』という項目がありますよね。それをクリックすると環境設定というのがでますから、そこで地域の太陽の位置を設定できるんです」
「へえ」
 言われた通りにクリックしてみると、日の出、正午、日没、深夜、地域の標準設定に戻すという項目があった。ボクは深夜をクリックしてみたが、周囲の明るさは特に変わったような気はしなかった。
「特に変化しないみたいですけど」
「ですね。もともといまの標準が深夜なのかも」
「ああ、なるほど」
「じゃ、奥に行きましょう」
 彼女が歩きだす。店内と思っていたのは入り口のエントラスだったようだ。少し通路のようなところを進んでいくと、広いフロアにでた。
 しかしアバターの名前は見えるが、アバター自体は見えない。周囲もぼんやりとしていてどんな店内なのかわからない。人が多くて表示に時間がかかっているようだった。
 さらに進もうとすると自分のアバター自身が前に進まない。かなり重い状態だった。
「ちょっと重いですね。周りが表示されてから奥に行きましょう」
 彼女がIMでそう言ってきた。ボクは「はい」と返事をしてそのまま画面の表示を待った。
 通常のチャットでは周囲の客たちの賑やかな会話が立て続けに表示されいく。
「音楽オンにしてますか? 今日はDJが生で放送してるみたいですよ」
 彼女がまたIMで教えてくれた。さっそく音楽を聴いてみるとHIPHOP系のノリのいいリズムが流れだす。
「見えてきたかな? 天井の方にミラーボールがあると思うんですが、それをクリックすると踊れますよ」
「はい、見えてます」

 このダンスボールは以前にもやったことがあった。クリックしてアバターにダンスをさせる。周囲のアバターも表示されてきて、みんなダンスを楽しんでいるようだった。
 SLユーザー以外は不思議に思うことかもしれないが、SLではダンスはかなりポピュラーな娯楽となっている。いま使ったようなそこにいる複数の人が同時に踊れるもののほかに、カップルでダンスができるものなど、アイテムも豊富だ。踊りながらチャットすることもでき、ここのようなクラブのほかでも人が集まる場所にはたいていダンスのアイテムが置いてある。
 ここは彼女の知り合いのお店らしく、何人かと挨拶を交わしていた。そしてボクのことも紹介してくれたので、簡単に挨拶をする。
「楽しんでいって下さいね~」
 そんな返事をして、オーナーらしい人はDJブースの中に戻っていった。
「けっこう遅くまで…というか明け方近くまでやってると思うので、適当なところでおちてかまいませんからね」
 彼女がIMでそう言ってきた。週末だし、みんな遅くまでインしているのだろう。
 DJが交代して、今度はちょっと懐かしい感じの曲がかかる。SLの日本人ユーザーは比較的平均年齢が高いといわれるが、この選曲でもそんな気がしてしまう。踊っている人たちもその曲に反応してチャットを打ち込んでいるからだ。
 あやさんとときどきIMで会話しながら過ごしているうちに、気がつくと深夜1時を過ぎていた。
「そろそろ眠くなってきたので落ちますけど…あやさんは?」
「あ、はあい。おやすみなさい。わたしはもう少し残りますね」
「はい。ではお先に。おやすみなさい」
 ボクはSLの終了ボタンを押してから、踊ったままの状態だったことに気がついた。次にログインしたとき、まだ踊っていたらどうしよう…。
 

by SUZUKAZE-YA | 2009-07-10 16:52 | NOVEL

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2009年 07月 09日

Second Life virtual travel/仮想空間妄想旅行記3

 Second Lifeにログインすると「JOOZZ MUSIC CLUB」だった。店の中には誰もいない。
 日本語版がリリースされた2007年7月には一般のマスコミも含めてSLの話題はよく取り上げられていた。しかし一年もすると「過疎化している」「衰退している」と言われるようになり。二年ほどが過ぎるとネット関連のニュースでも話題が取り上げられることがまれになってしまった。
 確かにインワールド(SL内)であまり人に会っていないような気がする。ログイン画面では同時ログイン数が5万数千人と表示されていたが、その人たちはいったいどこにいるのだろう。
 
「それは、ひと口で言うとSLの世界が広いからですね」
 ボクはまたあやさんに連絡して会っていた。今回も彼女にテレポートで呼び寄せられたのだけれど、そこは足湯だった。
 そしてボクの質問に彼女はそう答えたのだった。

「広いから?」
「そそ」そして彼女は続けて言った。「いろいろな場所がありすぎて、ユーザーが分散してしまっているので、人が少なく感じるというのもあると思うんです」
「なるほど。でも前から広いでしょ」
「さらに広くなってますよ。そうだなあ、日本人ユーザーに限っていえば、日本語版がリリースされたころって、日本人ユーザーが集まる場所ってそれほどなかったんですよ。でもだんだん自分でメインランドに土地を持ったり、プライベートSIMを持つ人が増えていって、それぞれに人が分散していって…という感じですよね」
「なるほどねえ」
「SLの楽しみ方には自分で物を作ったり、お店を営業したりというのがあるから、みんながそれを始めたら集まっていた人たちが分散するのは当たり前ですよね。SLユーザーはそれがわかってるから気にしてないんだけど、外からみるとどこに行っても人がいないとか、衰退してるって見えるんでしょうね」
「そうですね」
 SLはユーザーによって世界が広げられていくので、ユーザーの数だけステージが増えていくといってもいいのかもしれない。
「ここもキレイな場所ですけど人がいませんね」
「ですね。もっともこの周辺は居住に制限された地域なので、人が集まるという場所ではないんですよね」
「ああ、なるほど」
「SIMの中には何人かいるみたいですけどね」
「え、そうですか?」
「ミニマップを開いてみるとわかりますよ」
 ボクは画面の下にあるメニューの中にある「ミニマップ」を開いてみた。自分のいるSIMと隣接したSIMが表示されている。その中にアバターを示す点がいくつか見える。
「ああ、ほんとだ」
「同じSIMの中にいても、すぐ近くにいないと『誰もいない』と思ってしまうから、そういうところでも誤解されてるかもしれませんね」
「そうですね」
「『EVANS』も時間によってはけっこう人が集まってますよw」
「そうなんだ。まだあやさんにしか会ったことがないから、あそこも人がいないところかと思ってました」
「人が集まる場所といっても時間帯にも左右されますからねえ。いつ行っても人がいる場所は少ないですよ」
「やっぱりお店ですかね、人が集まるのって」
「そうですね、カフェやバー、クラブかなあ。まあ人気のあるブティックとかフリービーにも人はいるけど、いるというだけでチャットしたりする場所ではないですからね」
「フリービーって無料の服とか置いてある場所でしたっけ?」
「そそ。服以外にもSLで手に入るものはだいたいあるんじゃないかな。あ、種類という意味ね」
「ボクが着てる服も以前無料で手に入れたものでした、そういえば」
「フリーの商品ばかりを集めた大きなお店もありますから、SL初心者はそういうところでひと通りのものを揃える感じですよね」
「うんうん」
「いまは普通のお店でもフリー商品を置いたり、ラッキーチェアやラッキーボードっていう、イニシャルで商品が当たるサービスをして人を集めているところが多いので、けっこう質のいいものがタダで手に入りますよw」
「へえ~。お金ないからたすかりますね、そういうの」
 画面右上に、現在の所持金(SL内での通貨L$=リンデンドル)が表示されているが、ボクの所持金は363L$だ。
「自分で土地を持ったり借りたりということをしないのなら、お金がなくても楽しめますよ」
「そうですよね」
「まあ、課金しないでお金を稼ぐのならcampか、どこかのお店の店員になるのがいいでしょうけど」
「campかあ。SLを始めたころはよくやってました」
 campというのは、その場所に一定時間いるとお金がもらえるシステムで、ダンスをしたり、ただ座っていたり、チャットをすることでお金がもらえるところもある。SLでは一般的な収入方法で、その土地のオーナーが人を集めるため、土地のトラフィックをあげるために設置している場合がほとんどらしい。
「最近は効率のいいcampも少なくなってるみたいですしね。やっぱりカフェやバーの店員になって、チャットを楽しみながらお給料をもらったりチップをもらったりというのが、SL的には一番いいんじゃないかと思いますよ。SLってコミュニケーションツールだと思うから」
「なるほど」

「日本のSLユーザーは女性の方が多いって話もありますから、ホストクラブもいいかもしれませんよw」
「ホストかあ、自分のキャラじゃないなあ」
「まあ、いろいろなところを回ってみて、自分に合った場所を探すのがいいですよね」
「ですね~」
「じゃ、ちょっと移動しますね。またなんかあったらIMしてください」
「あ、はい。いろいろありがとう」
「またです~」
 そう言い残して彼女はテレポートしていった。
 足湯にひとり残されたボクは、しばらくその静かな雰囲気を楽しんでからログアウトした。
 

by SUZUKAZE-YA | 2009-07-09 17:39 | NOVEL